010105号ゴミゼロ通信「いぎりす便り＆etc」

☆ゴミゼロ通信2001年１月５日号（今号２６９通発信）
情報満載！ゴミゼロネットのホームページ　

http://plaza25.mbn.or.jp/~gomizeronet/

┏━↓ 今日の話題のダイジェスト↓━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
●今世紀最初のお正月のひとり言（壷阪）

・道路公団はペットボトルのリサイクルをやらない理由！？

・岐阜県関市の容リ法その他プラスチックのリサイクル

・灰溶融炉の話題

●栗岡理子さんの「いぎりす便り」豪華版
・２０００年三大ニュース
・CAT（Centre for Alternative Technology）訪問記
・スペインの５分の１が砂漠化！？サハラ砂漠の北進

　広がるヨーロッパの砂漠化！（Guardian紙）
●新世紀に羽ばたくとっておきの「夢」（朝日新聞１月１日静岡版より）
杉山夫婦「電気のない子育て」続報

●ゴミゼロネット第３９回定例会
日時２００１年１月１３日(土)午前１０時～１２時
所アイセル２１　４階４１集会室
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┏━↓ ●●今世紀最初のお正月のひとり言（壷阪）●● ↓━━━━━━━━┓

☆●道路公団のペットボトル

　私の「新世紀の幕開け」は岐阜への帰省と岐阜県下呂温泉でののんびりとした一時だった。

　途中の東名高速道路でパーキングエリアに立ち寄る。「高速道路外のごみは持ち込まないように」と表示とともにゴミ箱が設置されていた。ごみをわざわざ捨てに来るという話しも聞いた事がある。大量廃棄社会のひとコマとして見た。分別は「ビン」「缶」「その他燃えるゴミ」の三分別。でもエリア内の売店、自販機にはあのミニペットが売られていた。当然、ペットボトルは「燃えるゴミ」扱いである。

　自治体ルートの回収されたペットボトルは容器包装リサイクル協会の指定法人を使って、無料で引き取ってくれて、リサイクルされる。そのリサイクル費用は事業者の負担になっている。もちろん、その前の回収・運搬・梱包までは自治体負担である。

　一般廃棄物（市民の出すゴミ）は自治体ルートであるが、高速道路のパーキングエリアのゴミは事業ゴミー産業廃棄物扱いになる。従って、そのペットボトルをリサイクルしようとした場合誰が負担することになるのだろう？少なくとも、道路公団はその費用負担を嫌い、寄りやすい処理方法＝燃えるごみ扱いとしているのだろう。

　ペットボトルのリサイクルは一つのシンボルである。売った人（道路公団）の責任はどこへ？安易な消費者が悪いのか？利益第一主義の事業者が悪いのか？

☆●容リ法その他プラスチックのリサイクル

　帰省ついでに岐阜県関市の市役所生活環境課に立ち寄ってみました。関市は９６年１０月に市民ごみの部分有料化（年間１０１袋目から一袋３００円）した自治体です。その後のごみ量の推移も気になって寄ってみたのです。

　しかし、私の情報収集の目玉は昨年１２月から始まったその他プラスチック容器包装の分別収集です。

※その他プラスチック容器包装とは

卵パック、カップ麺のカップ類、ペットボトル以外のプラスチック製容器類、ポリ袋レジ袋類、プラスチック製フタ、ネット等々…

　詳報はもう少し整理してからするとして、雑感としては感じたこと

１．「収集されたプラスチック類は何になるのですか？」の質問に担当係長がすぐ答えられなかったこと

※プラスチック成形の車止めになるそうです

２．白トレーの分別収集コストは1年半前の夏には１５５円／ｋｇで２円／ｋｇで売れていたのに今回は３６５円／ｋｇかかっていて３円／ｋｇで売れているとのこと

いずれにせよ、関市も暗中模索の中大奮闘中という印象でした。

☆●年末から、今年にかけてホームページを見ての灰溶融炉に関する問い合わせが２件（四日市と県西部）がありました。その後、いくつかの情報交換も始まっています。今年はやっぱり灰溶融炉も大きな課題になる予感です。情報を整理して掲載予定。

　今年もゴミゼロ通信をよろしく御願いします。

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┏━↓ 栗岡さんの重大ニュース ↓━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

私にとりインパクトの強かった昨年の三大ニュース

１　サハラ砂漠が地中海をわたりヨーロッパを砂漠化。既にスペインでは５分の１が砂漠化。ヨーロッパの土地の３分の１が最終的には影響を受けるだろう。

２　狂牛病の原因に有機リン系農薬が関係している疑い？！

３　花王がペーパースラッジで紙ボトルを開発　＆　「うれしいトレペ」が宮内庁御用達トレペに？

２１世紀が素晴らしい年でありますように！

それでは新年を記念して恒例の「いぎりす便り」です。

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┏━↓ ●●いぎりす便り（CAT編）●●　↓━━━━━━━━━━━━━━━┓

　イギリスの風景は本当に美しい。草をはむ羊の群れ、なだらかに続く丘、石造りの趣ある家々、そしてナショナルトラストに守られた海岸線は白い岸壁と青い海が見事なコントラストを見せています。
　「手つかずの自然」より「人の手が少し加わった自然」の方が、美しく見えるといったのは誰だったっけ？本当にそう。でも、次第に落ち着かない気持になってきます。おそらく500年以上前には森林地帯だったろうと思われる場所でも羊や牛が飼われている限りは、遷移は止められいつまでも草地のまま。じっと見ていると自分が木の芽で、羊にムシャムシャ食べられているような、そんな苦しい感じがしてきます。
　イギリスは世界一早く工業化が進んだおかげで、燃料にするため早くに森林が破壊された国。そのせいか自然保護の機運もいち早く盛り上がり、1974年にはスレート（粘板岩）の採掘所後の荒れ地に、自然との共生をめざす科学者や学生達によるコミュニティが生まれました。
　このコミュニティはCAT（代替テクノロジーセンター）と呼ばれ、約16ヘクタールの敷地に代替テクノロジーが駆使され、様々なアイディアが実現され公開されています。

●実用化されているアイディア

　どんな変わり種の技術が実用化されているかというと、まず、はじめに気づくのは入場券売り場から入り口まで行くための登山ケーブル。このケーブルカーは35度もある急斜面を水と重力を利用して約61m登るようになっています。ケーブルカーには水が流れ込んだり吐き出されたりする仕組みのタンクが備え付けてあり、その水の重みを利用して動くわけです。この水のために池が掘られており、その池はちょうどビオトープの役目も果たしているようです。
　風車とソーラーパネルを屋根の上にのせた公衆電話は、風力と太陽を利用して使える構造。菜食レストランの床下暖房や売店、メインオフィスなどのセントラルヒーティングは、製材所からでる端材や枝から作ったチップをボイラーで燃やし、暖めたお湯を利用しています。

●トイレは２種類の処理方法

　おもしろいのはトイレで、湿地帯で自然浄化しているトイレとコンポストトイレの２種類あります。
　前者のトイレの男性小水用は使用後水を流さずに、植物エキスで匂い消しをしているそうです。使用した夫の話では確かにほとんど匂いはなかったとのこと。女性用は、「ELEMENTAL SOLUTIONS Ltd.」という会社の超節水型便器で、日本の大、小用に使い分けができるタイプと同様、ハーフフラッシュとフルフラッシュの２種類水量を選べるタイプ。説明書きによると、通常の便器は8～15リットルの水を流すところ、ハーフで１～２リットル、フルで３～４リットル流し、通常の使用量の90％も節水できるとか。
　そういえば、日本では以前ほど大、小用に使い分けができる便器を見かけなくなったような……？
　このトイレからの排水はすべてアシの湿地帯まで流れ、そこで個体は堆肥になり、液体はそのまま水草や柳の木のあるところまで流れ込み、浄化されるそうです。
　コンポストトイレは、男性用も女性用もまったく水を使わない仕組みとのことですが、CATにいる時はこのトイレに気づかず、入りそこねてしまいました。残念……見たかった。案内書によると、汚物とペーパータオルを２年間かけて微生物や虫などにより堆肥に変えているとのこと。ペーパータオルは堆肥化に役立っているそうです（水分調整のため？）。レストランなどの生ゴミ堆肥は畑の作物に、トイレの堆肥は果物の木や灌木にと使い分けているとか。

●４種類の畑で20年間、作物の生育を比較

　このような実用化されているアイディアとは別に、啓発のための展示も数多く、断熱材や二重ガラスを使った省エネハウスや波力エネルギーの模型、太陽熱温水器の熱効率を体感できるパネル、良い香りの植物を植えた「香りの庭」、不思議な味の植物を集めた「味の庭」などが並び、いずれの場所でも実際自分で使ったり味をみたりして、試せるようになっています。
　20年間実験を続けている畑がありました。畑は４つに区切られ、１と２の畑では堆肥を加えず作物を作り続け、３と４では毎年堆肥を与えています。全部の畑はもともとここにあったスレートがそのまま使われていますが、１と４ではスレートの上に良質の表土をかぶせました。
　実験を開始した直後は１と２の間には明らかな差があり、土をかけた１の畑では作物がよく育っていたとのことですが、20年後の今ではほとんど差はなく、やせた作物がヒョロヒョロと伸びているだけ。それに比べて、３と４の作物は見るからにたくましく育っています。土をかぶせてなかったはずの３の畑も、４の畑と大差がなく、堆肥は20年でがれきだらけの土地を良質の畑に変えてしまったようです。　
　モグラトンネルも面白く、ほら穴の中に入っていくと小さな虫の目で見た土の中の世界が再現され、ミクロの世界が観察できます。
　また、リサイクルスポットには生ゴミ入れ、ガラス、アルミ缶、スチール缶、ゴミ用のコンテナが置かれ、詳しい説明もなされています。

●自分の生活に取り入れられるものばかり

　CATでは年間100万人を越す見学者、および９人の常勤スタッフとその家族の使うエネルギーをほとんど代替エネルギーでまかない、地域の発電所の電力はごくわずかしか使用していないそうです。
　正直いってここにあるものは、大企業が出展している日本の環境展などに比べるととてもチャチで、はじめ見たときは「なんだ、これだけ？」と思いました。でも、見終わると「これでいいんだ」と思えます。複雑な機械や難しいシステムはあまりなく、やる気さえあれば誰でもDIYの店で部品を揃え作れるものがほとんど。環境テーマパークというより、自然体でコミュニティを公開しているだけという姿勢です。
　現にここにあるものを自分で作る場合のガイドとなる説明書が売店で安く売られています。よく「原発は危険だけど、仕方ないよね。電気は必要だから」という人がいますが、ここに来れば、生活レベルをあまり下げずとも、電気に頼らず暮らすことは十分可能だということがわかるでしょう。
　ここに来る人は「エコ・キャビン」に泊まり代替技術を使った暮らしを体験できます。ただし予約はお早めに。私は泊まりそこね近くのユースに泊まりました（ここでも生ゴミ堆肥を作るなどリサイクルは徹底していた）。CATでは、環境講座も年中開いているので、日程があえば参加してみるのも面白そうです。

　CAT連絡先：Centre for Alternative Technology
　　　　　　　Machynlleth, Powys, SY20 9AZ　（ウェールズ地方です）
　　　　　　　TEL 01654-703743 / 702400, FAX 01654-702782

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┏━↓ ヨーロッパで広がる砂漠化 ↓━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

2000年12月20日（Guardian）

　サハラは地中海を渡りつつあり、土壌劣化と気候変動が致命的に連動して南ヨーロッパの１部が砂漠化しているために、何千もの人々に移住を強いている。国連の主要会議のひとつは、結局最大３分の１のヨーロッパの土壌が影響されるだろうと、昨日報告を受けた。
　
　昨日初めて発表された数字によれば、５分の１のスペインの土地は砂漠化してしまっているといい、またイタリアでは南部の諸地域がいまや見捨てられて、技術的には砂漠化している。
　ポルトガル、スペイン、イタリア、ギリシャなどの４つのEUの国は、すでに多大な悪影響を受けているため、国連砂漠化防止会議The United Nations Convention to Combat Desertification (OCD)に参加し、今週にはボンで会議も開かれる。

　専門家のMaurizio Sociortino は、土壌劣化には気候変動や、小規模農地保有を不経済なものにし、人々を農地から追い立てている大規模農場の勃興などをふくむ、多くの理由がある、と話した。
　「大地はずっと、生産力を高めるために雛壇のように区画され丁寧に灌漑されることで、２０００年の間注意深く耕作され、保護されてきたが、それは見捨てられ、失われようとしている。雛壇の畦は破壊され、土壌は流され、むき出しの岩だけが取り残されている。これは、一度起こってしまえばもう元には戻せない。
　南イタリア、スペイン、ギリシャの状況は特に悪い。南フランスでさえも免れていないのだが、政治的な理由から彼らがそれを認めるまでにはほど遠い。」
　この問題は、EUに限られない。ブルガリア、ハンガリー、モルドバ、ルーマニア、ロシアはすでに砂漠化の兆候が伝えられている。
　専門家たちは、特にモルドバが「ひときわ被害を受けやす」く、農地の６０％が劣化すると言う。
　急速な劣化地域のベルトは、黒海を越えてモンゴルまで延びている。例えば中国は、北部での地力減退がその経済に年に４０億ポンドの負担を与えていると言っている。

　干ばつにあっているサルディア島（イタリア西部）や、シシリー島（イタリア南西部）のような場所では、経済状況が問題を加速している。「多くの場所で旅行業が状況を悪化させている」とScirtinoさんは言う。
　「水は地下からポンプで吸い上げられ、その結果海から塩水が帯水層へ引き込まれています。旅行者のための１８ホールのゴルフ場を保つのにどれほどの水が必要か想像してみてください。……問題は、人々がより多くの水を得るために脱塩装置を駆動するガソリンにお金を投ずることです。それが、地球温暖化を進めるています。これは、結局いっそうの砂漠化を意味します。私たちはこのサイクルを止めねばなりません。」
　イタリアは、砂漠化と闘っている北アフリカの国々を助けようと計画していますが、それは、ひとつには、ヨーロッパへの到着を企てる難民の波をくい止めるためでもあります。
　イタリアの環境庁長官であるValareo Calzolaio氏は、こう話している。すなわち、始め人々は田舎から都会へと移住する。その後、「移住民たちは、はるか西の彼方の幻影へと向かい・・・犯罪的な密航業者のネットワークの手中へと落ちるのである。」
　彼はまた東からの難民の数が増加していることも確信している。「もし私たちが緊急の行動を起こさなければ、１０年以内に何百万もの人々が劣化した大地からの移民を強いられ、彼らはヨーロッパへと頭を向けるだろう。」

　ドイツの元環境庁長官であり、現在は国連の環境計画実行長官である、Klaus Tofer氏は、しばしば見過ごされているが、土壌は、人間が安寧に暮らす事や環境にとって、ヨーロッパの多くの人々が注意を払ってきたきれいな水ときれいな空気におとらず、重要な資源である、と言う。
　「持続しうる農土利用は、ヨーロッパの環境や経済、社会における最も重要な課題の一つである。」
　ヨーロッパ環境協会の実行責任者である、Domingo Jimenez-Beltran氏は、「ヨーロッパのいくつかの場所で、劣化はとてもひどく、人々のコミュニティや生態システムを維持する土壌の能力を減退させ、砂漠化をもたらしている。ほとんどの土壌は再生するのに何百年、何千年とかかるので、今日生じている被害は、どんな目的のためにも、回復できない」と話している。
　昨日出版されたリポートの中で、（国連の？）当局は、深刻な土壌劣化の最初の段階が、ヨーロッパの一部で注目されており、１５億ヘクタールの土地が浸食の危険にさらされていると書いている。地力減退は地中海沿岸諸国で危機的段階にある。

　他方、東ヨーロッパでも状況がよいわけではない。ウクライナでは農地の41％が浸食の危険にさらされている。
　最近までに、国連の１７２の諸国が国連の用語ではOCDとして知られるものを批准しているが、これはそのメンバーの４度目の会合である。それは、気候変動会議――それは最近ハーグ（オランダ西部の都市）で惨めに失敗した会合を開いたところだが――と、種と生育地の保護を試みている、生物多様性会議Biodiversity Conventionの姉妹組織である。
　この会議の担当秘書官であるHama Arba Diallo は、砂漠化と闘うほとんどの計画がスケールが小さく、移民と衝突とを防ぐためにアフリカの国境付近に集中していると話す。
　「私たちの試みのほとんどは２万ドルから５万ドルかかり、何をする必要があるのかを定め、それを実行している地域のコミュニティを巻き込んでいる。私は、２万ドルで１５ヘクタールの砂漠を価値のある農地に変わった、中国の試みを紹介できる。もし私たちがその１００倍のお金を得るなら、砂漠を押し戻すために１００回もの同様の試みを行うことができるのだ。」
　けれども、Diallo氏は、このような小さな地域の試みに融資を引きつけるのは難しいと語った。

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電気のない暮らし「育児編」序章

┏━↓ ２００１年１月１日朝日新聞静岡版 ↓ ━━━━━━━━━━━━━━┓

●●新世紀に羽ばたくとっておきの「夢」

●「豊かさってなんだろう」

　体じゅうから湯気がフワファと立ち昇っているケイちゃんを、杉山里果さん(二八)がいとおしそうに胸に引き寄せた。
「ようこそ!ケイちゃん」
　今度は、五時間にわたる陣痛に付き添い、初めての赤ちゃんを自ら取りあげた夫の大介さん(二九)が、満面の笑みで抱き上げた。
「ウギヤー、ウギヤー」。身長四.六㌢、体重二，五八〇㌘。生を受けてほんの数分のケイちゃんは、真っ赤な顔をくちゃくちゃにして大声で泣き続けた。
昨年十二月、二十一世紀を歩む「いのち」が生まれた。

杉山慧ちゃんは、電気を使わない「太陽のサイクルに合わせた生活」をしている。一家は、静岡市の中心部から南アルプスに向かって北に車で一時間余り、山深い温泉地・梅ケ島を流れる安倍川のほとりに暮らす。住まいは、建設作業の煮炊き場として使われたプレハブの借家だ。
日当たりの良い部屋から、ケイちゃんの泣き声が響いた。「ハーイ、ハイ。ちょっと待つてね」。炊事をしていた里果さんが駆け寄り、あやしながら母乳をあげる。ケイちゃんが、まどろみ始めた。

一家のいのちを支える水は、沢のわき水を貯めた共同井戸からの分水だ。ケイちゃんの大好きなおふろは、「四十年もの」のかなだらい。湯はまきストーブで温める。夏の汗は、ドラム缶に手を加えて造った「露天ぶろ」で流す。
屋根裏に段ボールを敷くなど防寒のための工夫も多い。おむつ洗いのための中古の二層式洗濯機は近く、自転車をこいで動かせるように改造される。生活費は「月五万円程度」。「必要ないかな、ど感じたものを少しずつ除いてきたら、いまの生活になった」と大介さんはいう。
二人がここに移り住んだのは一九九九年の春。最初のころは近くの市営温泉の立ち上げを手伝っていたが、が、昨年から更には紅茶や番茶の製茶を、冬はわさび漬けをつくる依田健太郎さん(四九)の手伝いをして生計を立てている。
依田さんは、梅ケ島の農家だ。二十年前から有機農法による茶づくりを手がけ、「その世界では知る人ぞ知る存在」(大介さん)。「依田さんや多くの人に支えられての生活」と話す二人は、回り道をしながらこの暮らしにたどりついた。

* * * *
大介さんは静岡市で生まれ、高校を出て自衛隊に入った。しかし、九二年、カンボジアへの自衛隊のPKO派遣をめぐって紛糾する国会をみて落胆。「僕らは海外向けに国のプライドを満たすための存在なのか」。除隊し、自転車の旅に出た。野宿やアルバイトせしながら全国を走るうちに、「モノと金は必要最低限で十分」と思うようになった。
横浜市生まれの里果さんは大学卒業後、知人と二人で自然食品販売の会社を興した。無添加のみそ、無農薬米などを生産者から仕入れてトラックで訪問販売しながら、消費者に土や水の大切さを伝えた。過剰な包装材やトラックの排ガスを出す生活に、疑問を抱くようにもなっていた。
二人が初めて出会ったのは六年前、北海道の礼文島だった。二年後、同じ宿で偶然にも再会した。
「豊かさって、なんだろう」同じ思いを抱いていた二人は意気投合。放し飼いした鶏に「卵を産んでもらう」という気持ちで接している農家、ハーブや野菜を育て自給自足している人たちを訪ねるうちに依田さんと出会い、梅ヶ島に。二人の生活が始まった。

* * * *
　白菜、里芋、大根…。一家の土間にはいま、冬を彩る野菜が積まれている。ほとんど、近所からの「おすそ分け」だ。里果さんは玄米をナベで炊きながら、手早く野菜を切り刻み、鉄板を取り付けたストーブの上で手際よく調理していく。一家の夕餉は「一汁二菜」が基本だ。
午後五時。帰宅した大介さんがストーブに薪をくべながら、ケイちゃんをあやす。灯油ランプの薄明かりの中、静かに語らいながら食事をし、自家製の番茶をすする。午後九時。大介さんがランプの灯を落とし、一家は物音ひとつしない漆黒のやみに包まれながら、川の字になって眠りにつく。
そんな暮らしでも、車と電話だけは欠かせない。ごみやエネルギー問題を考える会合には県外であっても顔を出し、いろいろな人との出会いの中でさまざまなことを学んでいるからだ。地域の人は「変わった二人」というが、そのまなざしは、どこか温かい。
「今は今の条件の中で何ができるか、いろいろ挑戦している時なんです。目標は『農』を通じた循環型の暮らし」と大介さん。里果さんも「大量生産、大量消費に浸った世の中を、自分の足元から少しでも変えていければ」という。
ケイちゃんを新たな家族に迎え、二十一世紀も同じ暮らしを続けていくか、まだ分からない。それでも、この先もこのことだけは、自分たちに、そして多くの人に問い続けていきたいと考えている。
「豊かさって、いったいなんなのだろう」
　
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ゴミゼロプラン静岡」市民ネットワーク（略称ゴミゼロネット）
〈第３９回会合のお知らせ〉毎月第２土曜日
日時２００１年１月１３日(土)午前１０時～１２時
所アイセル２１　４階４１集会室
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内容
①第３回ゴミゼロフェスタについて
②溶融炉・処分場問題
③３月循環型社会大講演会・その他
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│壷阪道也　　　　　　　　　　　　　　　　　
│〒421-0111静岡市丸子新田277-4
│TEL・FAX 054-257-3177　　　　　　　　　
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