010714号ゴミゼロ通信「ガス化溶融炉・サーモセレクト方式の虚構」

☆ゴミゼロ通信2001年７月１５日号（今号３５２通発信）
情報満載！ゴミゼロネットのホームページ　
http://plaza25.mbn.or.jp/~gomizeronet/
┏━↓ 今日の話題のダイジェスト↓━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

●インゴ・ゲテケ氏講演記録

・「川鉄サーモセレクト」は連日見学者で賑わい、夢の技術と言うが本当か？

☆立て続けのトラブル・カールスルーエ市サーモセレクト業停止の指示を受けていた

・クレーンが停止し、操作不能

・ダイオキシンを含む生成ガスが外部に漏れた。

・耐火レンガが予想より早く磨耗
・冷却装置の中で爆発。

・高温反応炉の圧力が急上昇。

・フイルター部分に穴が開き、重金属を含んだ水が地下に浸出
・緊急燃焼室のトラブルです。
☆残されたいくつかの問題
・排水汚染と膨大なエネルギー消費

☆ドイツでは見放される溶融炉

●〈第４６回定例会〉（毎月第２土曜日　8月は特別）
日時２００１年８月4日(土)午前１０時～12時
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

　数日前、環境ジャーナリストの津川敬さんから、去る5月２６日川越市で行われた講演記録が送信されてきました。

　しかし、私ごとではありますが、頭の中が別のことでいっぱいでせっかくの記録をゴミゼロ通信で発表することが遅れてしまいました。また、私の中では未整理・不十分なのは事実です。

　それでも、全国で溶融炉導入に苦闘苦慮されている皆様への貴重な資料として、津川さんが私に託されたものですので、1日1秒でも早く、掲載するのが私の義務と思い、とりあえず掲載させていただきます。

　以下は私が作成した超ダイジェスト版。その後に津川さんからの記録です。

太字にしたには私でありますので、必ずしもポイントをついているとは限りません。

しかし、難しいテーマですので少しでも読みやすくと思い、そうさせてもらいました。

又、普段はテキストファイルで送信していますが、読みやすくするためにＨＴＭＬファイルとさせていただきました。

重い送信で申しわけございません。

尚、8月からゴミゼロ通信は更にパワーアップして復活いたしますので、

ご期待ください。（「ゴミゼロプラン静岡」市民ネットワーク　壷阪道也）

-------------------------------------------------------------

●インゴ・ゲテケ氏講演記録（超ダイジェスト版　ＢＹ壷阪）

（津川さんの前書き）　　　

・「川鉄サーモセレクト」は連日、自治体幹部や産廃業者、一般市民などの見学が引きも切らずの人気・

同社の説明は「きわめて順調に動いている」というが？

他のガス化溶融炉が熱分解で発生したガスを使って溶融。サーモセレクトは純酸素で溶融、ガスは精製して工業用に使用する、という点が特徴である。急冷されるため、ダイオキシンの再合成はない．

しかも飛灰が出ないため、バグフィルターも煙突も必要ない。

本当にそうなのかが、講演のポイント。(

◆立て続けのトラブル
　カールスルーエ市においてサーモセレクトは実は何度もトラブルを起こし、「緊急時運転の時間が長すぎるということ、汚染物質の排出量が多すぎたこと」により全面操業停止の指示を受けていた

トラブルは

１.クレーンが停止し、操作不能。。

２.脱ガスチャンネルとメインの高温反応炉をつなぐ部分に不整合ダイオキシンを含む生成ガスが外部に漏れた。

３.（耐火レンガ）が予想より早く磨耗。耐火レンガは１万６０００時間保持される設計だったにもかかわらず、実際は、第一回で３０００時間、第二回は３０００時間でレンガを交換。
４.冷却装置の中で爆発。

５.高温反応炉の圧力が急上昇。

６.フイルター部分に穴が開き、重金属を含んだ水が地下に浸出
７.緊急燃焼室のトラブルです。
◆残されたいくつかの問題
・風向きによっては排ガス中の重金属類にさらされる懸念、ガス冷却に大量の水、水はプラント内で循環する、とサーモセレクト側は説明，明らかに出（排水分）の方が大きい

・エネルギー収支膨大なもの。
・酸素吹き込みだけでは２０００℃にならない。天然ガス（ＬＰＧ）を使用

◆ドイツでは見放される溶融炉

溶融炉が注目されてきたが、９８年のフュルト（シーメンス）、９９年のアーレン（ＰＫＡ）で相次いだガス漏れ事故、そして今回のサーモセレクトとトラブルつづきで、現在は従来型焼却炉が主流となっている。

-------------------------------------------------------------

*************************************************************

インゴ・ゲテケ氏講演記録　　　　

津川　敬（環境ジャーナリスト）

◆はじめに
　２００１年５月２６日（土）、埼玉県川越市の住民団体（「川越市のごみ処理施設を考える会」）がドイツ・カールスルーエ市在住の化学分析専門家インゴ・ゲテケ氏を招き、講演会を開きました。同市は早くから新日鉄の直接溶融炉導入を計画していましたが、住民の激しい抵抗に会い、計画を断念しました。
　ところが一昨年、首都圏で唯一稼働したサーモセレクト方式を見学した川越市長がこれに触発され、同プラントの導入を検討しはじめたのです。
　千葉市内の川崎製鉄所構内に９９年秋から稼働している「川鉄サーモセレクト」はその斬新な建屋の外観（全身が深紅に塗られている）と〝煙突がない〟奇抜な設計思想で評判をとっているユニークなプラントです。連日、自治体幹部や産廃業者、あるいは一般市民などの見学が引きも切らず、日程をとるのがたいへんという、まさに小泉なみのブームが起きています。同社の説明は「きわめて順調に動いている」に終始し、見学者は「煙突がないからダイオキシンは出ない」と勝手に思い込んでしまうのです。
　ところが本家筋にあたるドイツ・カールスルーエ市のプラントが足掛け３年もトラブっており、その情報をインターネットや現地の新聞でキャッチした川越市の住民団体は市に対し何度も意見書や要望書を提出、サーモセレクト方式の持つ危険性を訴えてきました。　しかし市は耳をかさず、時間切れ（本年５月末）を楯に基本計画の策定を急ぐのみでした。そこで先の住民団体がインターネットの発信者でもあるゲテケ氏をとり急ぎ招聘し、講演会開催の運びとなったのです。
　当日、メールやインターネットなどで催しを知った市民たちが首都圏各地から川越に駈けつけ、８０人近い熱心な聴衆で会場は埋まりました。
　以下、当日の講演要旨ですが、ゲテケ氏の通訳に当たったのは欧州を主対象とした環境技術情報分析機関（Seto Quality Service Inc）の代表・瀬戸晃氏です。この道の専門家としてドイツの環境問題や内外のごみ処理技術に通じている瀬戸氏の通訳は明晰かつ的確で、講演後の質疑応答も活発をきわめました。

〈参考〉　サーモセレクト方式の概要
　いわゆるベンチャー企業であるサーモセレクト社は１９９２年１０月、イタリア・フォンドトチェで１００トン／日の実証プラントを稼働させ、１.２メガワットのガスエンジンテストを含む７,５００時間の実証試験を完了（処理廃棄物５,５００トン）させた。その時はＴＵＶ（技術検査協会）から高い評価を得た、という。
　９６年にはドイツ連邦とカールスルーエ郡政府の作業部会が「サーモセレクト方式をドイツに導入する案件を支援」することを公式発表。
　９９年３月、カールスルーエ市で２４０トン／日×３基の実用プラントが試運転に入っている（年間２２万５０００トン処理）。
　建設費は２億５０００万マルク（日本円で約１３７億円）。ただし追加費用が６５００万マルク（約３６億円）かかっている。
　９９年１０月にはサーモセレクト社と技術供与契約を締結（９７年）した川崎製鉄が千葉市の自社製鉄所内に同プラントを建設し、試運転を開始した。
　サーモセレクト技術の概要は以下のようなものである。
１. 受け入れごみはプッシャー（押し込み機）で圧縮され、水分が抜かれる
２. 乾燥されたごみの固まりは、次の工程で純酸素を吹き込まれ、２０００℃の高温で溶融される
３. 熱分解ガスは縦型の高温反応炉内を上昇し、クラッキング（ガスの改質）され、
４. 次の急速冷却塔に入って１２００℃から７０℃まで一気に冷却される
５. 回収されたガスは脱硫、除湿されて工業用ガスに精製される
　つまり他のガス化溶融炉が熱分解で発生したガスを使って溶融するのに対し、サーモセレクトは純酸素で溶融、ガスは精製して工業用に使用する、という点が特徴である。
　排ガスは３００℃という温度域を一気に飛び越えて７０℃に急冷されるため、ダイオキシンの再合成はないとサーモセレクト側はいう。しかも飛灰が出ないため、バグフィルターも煙突も必要ない。理論的にはたしかに魅力的なプラントである。
　なお、ドイツでは自治体がプラントを直接動かす例は少なく、カールスルーエの場合はＥｎＢＷ（エネルギー・バーデンヴュルテンベルク）という電力会社と運転委託契約を結んでいる。

〈　講　演　要　旨　〉　

◆立て続けのトラブル
　カールスルーエ市においてサーモセレクトは安全かつ継続的に動いているのか。残念ながらノーです。その事実を示すいくつかの数字をあげておきます。
　まずカールスルーエ郡と運転受託会社との契約では「１９９９年１月１日から正式運転に入り、年間２２万５０００トンのごみを処理すること」となっていました。従って現在（２００１年５月末）までに５４万８０００トンが処理されている筈ですが、実際に処理された量は７万２０００トンにすぎません。これは契約額の１４％です。残りの４７万６０００トンのごみは目下遠く離れた処分場に列車で運ばれています。
　なぜそんなことになったかといえば、契約開始後、このプラントが数週間、数か月にわたって何度もトラブルを起こし、２０００年７月２６日には監督官庁（カールスルーエ郡政府）から全面操業停止の指示を受けていたからです。理由は緊急時運転の時間が長すぎるということと、汚染物質の排出量が多すぎたことの二点です。
　では各種トラブルの実際を紹介しておきましょう。

１.まず、ごみバンカー（貯留所）のクレーンは１日あたり５００トンの搬送能力をもっている筈が設計不良で１０分の１の能力しか発揮できなかったことです。たびたびクレーンが停止し、操作不能になりました。そのためバンカーの中でごみが腐ってメタンガスが発生し、発火、爆発の危険すらあったのです。本来、ヘリウムやネオンなどの不活性ガスでそれを防ぐ手立てを講じておくべきでした。

２.次にごみを圧縮し、蒸し焼きにする脱ガスチャンネルとメインの高温反応炉をつなぐ部分に不整合があったのです。つまり前者（脱ガスチャンネル）が６００℃、後者（高温反応炉）が２０００℃で、この負荷の差でダイオキシンを含む生成ガスが外部に漏れてしまいました。その接続部分は９９年から２０００年にかけて交換せねばならなりませんでした。

３.そして高温反応炉の内壁（耐火レンガ）が予想より早く磨耗していたのです。事故が起きたのは９９年１２月のことでした。レンガの一部が崩落し、冷却塔の温度が急上昇したため、反応炉自体が爆発する危険もありました。耐火レンガは１万６０００時間保持される設計だったにもかかわらず、実際は、第一回で３０００時間、第二回は３０００時間でレンガを交換せねばならなかったのです。つまり年に二回もレンガ交換が行なわれたということです。むろんその改修工事には何週間もかかりました。したがってカタログに謳われていた連続運転などは幻想にすぎなかったのです。

４.９９年５月には冷却装置の中で爆発が起きました。バルブが壊れて圧力が上がり、ポンプも壊れました。建物の損害額は５０万マルク（約２８００万円）に及びました。

５.高温反応炉から出るガスの配管にも問題がありました。ガスといっしょに微細な粒子も運ばれるわけですが、それが配管に堆積し、高温反応炉の圧力が急上昇したのです。

６.クローズドシステム（冷却用の水を循環して使い、プラント外に出さないというシステム）の要である沈澱槽（汚水を濾過する装置）が欠陥品だったらしく、フイルター部分に穴が開き、重金属を含んだ水が地下に浸出してしまったのです。したがって沈澱槽を交換せねばなりませんでした。

７.そして現在、最も大きな問題は緊急燃焼室のトラブルです。

　（津川注）・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

　緊急燃焼室（ＢｒｅｎｎＫａｍｍｅｒ＝以下燃焼室）とは炉の運転が止まった時など、緊急に生成途中のガスを建屋上空に逃す装置をいう（川鉄では放散塔と呼んでいる）。装置の真下にはバーナーが備えてあり、生ガスをそこで燃やして大気中に〝放散〟する仕組みである。燃焼温度が低いため、ダイオキシンやジベンゾフランは分解されず、窒素酸化物や重金属類も大気中に揮散する。　　　　　　　　　　　　　

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

　この問題は早くからドイツ技術検査協会（ＴＵＶ）が懸念していたところであり、汚染物質の排出濃度を業者側が示した自主規制値以下に抑え、燃焼室の運転を年間５０時間以下にするようカールスルーエ郡政府に規制の強化を求めていた。　　　　　　　

　２０００年７月、カールスルーエ郡政府は「本年３月３１日、運転時における大気汚染物質の排出濃度が規制値以下にあったことからサーモセレクト３系列の通常運転を２０００年９月３０日までの期限つきで認可した」と公式に発表した。ただし「期間中の取り消しもあり得る」との条件をつけている。加えて郡政府は操業者サイドから認可期間中に提出される変更申請に対し最終決定がおりるまで毎月の燃焼室運転時間を住民への情報として公開する旨、言明した。　　　　　　　　　　　　　　　　

　しかるに２０００年４月から６月までの３ヵ月間で許容時間（年間５０時間）の８０％をすでに使ってしまったところから郡政府が不快の念を示し、サーモセレクト側にこの部分の設計変更を命じたのである。郡政府は９月以降もプラントの運転を許可する条件として、①燃焼室の運転時間を著しく下げるか、②根本的に「新しく、深く検討」し、「適切と思われる時間内」で実施可能な燃焼室改造のコンセプトが提出される場合であると明確に方針を示した。　　　

　運転を請け負った電力会社も郡政府と意見を一致させ、サーモセレクト側は短期間で設計変更（バーナー燃焼で発生した有害ガスや重金属類を「清浄」にして放散）するとの見解を示した。そして２０００年８月から改修点検に入ることを理由に運転を休止した。

　改修のポイントは次のようなものである。　　　　　　　　　　　　　　　　　

　「放散塔からの重金属類排出を完全に停止し、これを燃焼室に使用するため放散塔には蓋をする。燃焼したガスを冷却後、『５０メートル煙突』に導入する。煙突手前には脱硫装置を設け、脱硫・除塵を実施することで燃焼ガス中のダストに起因する重金属類を除去し自主規制値（約束値）を達成する」。（ここで特筆すべきは、カールスルーエのプラントには「煙突がついている」ということである。重金属類揮散の条件は同じなのに、川鉄プラントのセールスポイントは「煙突がない」ことだった）。

　　サーモセレクト社はその改善計画に基づき、約３,０００万マルク（約１６億円）をかけて改修工事を実施した。一部の新聞が「施設閉鎖（closed down）」と誤報する一幕もあった。２０００年１１月初旬、ＴＵＶはようやく修理結果を了承し、郡政府もいくつかの条件を示して２００１年２月２日、操業を許可した。まだ細かい点で改造の必要があったのである。たとえばバーナーのノズルが不備（ガスと空気の切り替えが完全でない）など、いわば仮免がやっと与えられた状況で、２０００年５月現在、まだ正式操業には至っていない、とインゴ・ゲテケ氏はいう。　

　　　　　　　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

◆残されたいくつかの問題
　建設予定地近辺には学校などの施設があり、風向きによっては排ガス中の重金属類にさらされる懸念もあります。
　次に水収支について検討してみましょう。まず、ガス冷却に大量の水を使いますが、その水はプラント内で循環する、とサーモセレクト側は説明しています。ですがその水収支（入りと出）を計算してみると明らかに出（排水分）の方が大きいのです。

・水の使用量　　ごみ１トンあたり　２.９１ｍ3
・回収可能量　　　　　　〃　　　　　０.６８ｍ3

　すなわちこの差、２.２３ｍ3が排水となるわけで、もし川越市に建設するとしたら３系列ですから、その３倍になります。これを年間にしてみると、１日処理量１００トンで、年間のごみ量を１０万９,０００トンとすれば、

・要求される水の量　　２４万４,１８５ｍ3／年

となります。問題は排水処理がどう行なわれるかです。川越の現地を案内してもらって気付いたのは予定地付近に排水河川がないということです。では水はどこに流すのか。
（原発と同様海岸べりかドイツのライン河口など、水辺でなければ建設は無理とする専門家もいる・津川注）。

　次にエネルギー収支をみると、

・ごみ１トン処理に要する電力量　　　　　　　　　１５８Ｋｗ／ｈ
・天然ガス使用分も含めた年間電力消費量　　　４,８００万Ｋｗ／ｈ

とこれもかなり膨大なものになります。

　またＴＵＶのレポートではマルチスクラバー（ガス改質の過程で硫黄を分離する装置）の機能が十分でなく、ごみの中の硫黄分が多い場合は処理能力を超えてしまう懸念もあります。

　
　（津川注）・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

　川鉄のサーモセレクト炉は製鉄側から純酸素の供給を受け、できた改質ガスを製鉄側に供給する。いわばバーターになっているからそのコストはゼロに等しい。ところが自治体がサーモセレクト炉を導入した場合、酸素製造装置（ＰＳＡ）に多額のコストがかかり、しかも酸素吹き込みだけでは２０００℃にならない。川鉄側は明らかにしていないが、カールスルーエでは加熱に天然ガス（ＬＰＧ）を使用している。また自治体が改質ガスをつくってもそれをどこで使うのか。この辺も不透明である。　　

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

　講演を終わるに当たって、川越市の皆さんに二つだけ提言をさせて頂きます。　　　
　まず、計画は再検討さるべきだし、サーモセレクトから距離をおくことです。第二に、多年にわたり十分検証された技術を選択すべきです。カールスルーエのように、稼働後さまざまの問題が起きてからでは遅いということです。　　　　　　　　　　　　
　以上でわたしの話を終わらせていただきます。　　　　　　　　　　　　　〈拍手〉　

〈　質　疑　応　答　〉　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｑ.サーモセレクトは「煙突がない」が売り物で、われわれもそこを評価しました。ドイツではどうなっているのですか。
Ａ.川鉄のような放散塔ではなく、５０メートルの立派な煙突が付いています。

Ｑ.ダイオキシン類は消滅したわけでなく、ガス洗浄水などの中に含まれていると思いますがーーー。
Ａ.発生したダイオキシンは１５％が大気に、５０％が水に、３０％が回収物（硫黄、水　酸化物など）に入ると思われますが、データは公開されていません。

Ｑ.まだカールスルーエのサーモセレクトは完全に動いていないとのことですが、その間収集されたごみはどうなっているのですか。
Ａ.鉄道で約２０キロメートル離れたブルフザールという地方にある処分場に運ばれています。その数量は現在までに４７万６０００トンです。収集対象となっている地域は次　のとおりです。カールスルーエ市、カールスルーエ郡、バーデンバーデン市、バーデンバーデン郡です。ちなみに最も遠い地域から処分場までは４５キロも離れています。
（ゲテケ氏の話によると現在ドイツでは埋立て６０％、焼却３０％であり、残り１０％がＭＢＡという生物分解方式になっているという）。

Ｑ.今日のお話ではまったくの欠陥炉としか思えません。そんな技術をなんで川鉄が導入したのですか。
Ａ.川鉄は自社開発が他社にくらべ相当に遅れた。その時間を取り戻すためと思います。
　（川鉄の説明によると「我が社は他社に比べ、トラック競技でいうと１周半は遅れている」とのことであった・津川注）。

Ｑ.カールスルーエ市以外でサーモセレクトを導入しようとした例はあるのですか。
Ａ.ハナウが検討中といいます。アンスバッハには建屋はあるのですが、中はガランドウです。イタリアのフォンドトチェにあるパイロットプラントは技術的・法律的問題で停止しています（経営者が汚水漏れで刑事罰を受けたという・津川注）。

Ｑ.ＴＵＶから監督官庁（ここではカールスルーエ郡政府）への情報の流れ、および官庁はどの程度市民に情報公開を行なうのですか。
Ａ.ＴＵＶは契約に基づき検査情報と各種データを依頼主である官庁にすべて伝達する義　務を負っています。しかし官庁は必ずしも市民にそれを公開するわけではありません。　市民が情報公開を迫らなければ、たぶん隠します。

Ｑ.数年後、ドイツでは埋め立てが禁止されると聞いています。それならガス化溶融炉はむしろ必要になるのではありませんか。
Ａ.たしかに２００５年５月３１日をもって埋め立ては禁止されます。そこで溶融炉が注目されてきたわけですが、９８年のフュルト（シーメンス）、９９年のアーレン（ＰＫＡ）で相次いだガス漏れ事故、そして今回のサーモセレクトとトラブルつづきで、現在は従来型焼却炉が主流となっています。むろん窒素酸化物をとる脱硝装置、バグフィルター、活性炭など日本より厳重に装備されています。焼却炉は大型化が避けられず、大量にごみを運ぶトラックの排ガスが深刻な問題となるでしょう。

〈カッセル廃棄物フォーラム〉
　　　　従来型ごみ焼却への賛同、ドイツ廃棄物処理専門家の間で増える

　ドイツでは毎年４月にカッセル市において廃棄物処理専門家が集まり、「カッセル廃棄物フォーラム」を開催している。今年の第１３回会議（４月２４日～２６日）での大きな特徴はストーカ炉など従来型焼却が見直され、賛同が広がったことである。
　ここ数年、生活廃棄物処理のひとつとして機械的分別生物的処理（ＭＢＡ）が２００５年の未処理廃棄物の埋立て禁止対応として脚光を浴びるとの見方が強かった。しかし今年３月、ＭＢＡを法的に認知する政令が発効すると同時に関心はむしろ低下した。
　それはＭＢＡプラントの排気ガスによる大気汚染を焼却処理の煙道ガスと同様なレベルに規制したことや、ＭＢＡプラント作業員への労働安全上の改善をしなくてはならないこと、さらに焼却処理に比べて従来いわれていたようなコストメリットがなくなったという点が大きい。
　加えて狂牛病の蔓延、口蹄疫などによる動物性粉末、屠殺廃棄物などの処理法として焼却処理が最も安全確実であること、下水処理汚泥も農業肥料などへの利用は重金属類による土壌汚染を引き起こす危険があることなどで、流動床炉などの焼却処理がクローズアップされた。シーメンスやサーモセレクトなどガス化溶融炉のつまずきもその要因のひとつに数えられる。
　カッセル廃棄物フォーラムではまたスイスの廃棄物処理政策も大きな関心を呼んだ。ドイツの容器包装廃棄物すべてをリサイクル回収しようとするＤＳＤ方式とは一線を画し、マテリアルリサイクルできる価値のあるものだけを低コストで回収して２０００年１月１日よりすでに可燃物の埋立てを廃止したからである。また地域密着型の小型焼却で住民の反対運動を招かなかった隣国スイスのプラグマチズムを評価する専門家がドイツでも増えている。
　　　「ＥＵＷＩＤ：週刊リサイクリング・廃棄物処理」〈提供：Seto　Quality Inc〉

　最後の部分に疑問も残りますが、ドイツで（ということは欧州全体で）ガス化溶融炉への不信が決定的になったことは事実のようです。なお先にお送りしたインゴ・ゲテケ講演録にあったアンスバッハ市でサーモセレクトとの契約廃棄が先月（６月）２５日、決定しました。

-------------------------------------------------------------

*************************************************************

--------------------------------------
「ゴミゼロプラン静岡」市民ネットワーク（略称ゴミゼロネット）
〈第４５回定例会〉毎月第２土曜日
日時２００１年８月4日(土)午前１０時～12時
　所　アイセル２１　４階４１集会室
--------------------------------------
内容
①生ごみたい肥化
②展示会（アイセル・環境展）
③御殿場探検隊・その他
--------------------------------------
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
☆あなたの友人のメールアドレスをお知らせください
☆ゴミゼロ通信は転送、転載、複写何でもＯＫです
☆あなたの情報、ご意見、ご感想をお待ちしております
☆※送信御迷惑な場合は遠慮なくご連絡ください！送信を止めさせていただきます
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
●●ゴミゼロプラン静岡」市民ネットワーク●●
　☆連絡先☆

┌────────────────────┐
│壷阪道也　　　　　　　　　　　　　　　　　
│〒421-0111静岡市丸子新田277-4
│TEL・FAX 054-257-3177　　　　　　　　　
│Email mirai2@bj.mbn.or.jp future2@nyc.odn.ne.jp
│HP　http://plaza25.mbn.or.jp/~gomizeronet/　　　　　　　
└────────────────────┘