011012号ゴミゼロ通信「溶融炉Q&A」

☆ゴミゼロ通信2001年10月１２日号（今号４９９通発信）
情報満載！ゴミゼロネットのホームページ　
http://plaza25.mbn.or.jp/~gomizeronet/
┏━↓ 今日の話題のダイジェスト↓━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
●津川さんからのメール・私の意見感想

「廃棄物処理を市町村の仕事と固定化」することには反対

●ガス化溶融炉と広域化計画Ｑ＆Ａ＜超要約版＞ｂｙ壷阪道也
● 「ガス化溶融炉と広域化計画Ｑ＆Ａ（仮題）」　津川　敬

Ｑ２０最近のメーカーおよび廃棄物処理行政の動向はどうなっているか

・崩れ始めた広域化計画
・過当競争と淘汰のはじまり
・廃棄物処理業界と行政の再編
Ｑ２１広域化計画、ガス化溶融炉導入という大きな流れにどう対抗すべきか

・反民主主義的な広域化計画に反対すること
・基準値行政を打破すること
・ダイオキシン類測定の詐術とどう闘うか
・市民の手でできること
・もうこれ以上、後の世代に環境破壊と財政破綻のツケを廻すことは許されない。

●サラワク・プナンの森は訴える
時間 2001年10月22日(月)PM6:30～９:00
場所：労政会館５階視聴覚室
●大昭和製紙・日本がコアラの森を壊している？！（仮称）
時間2001年１１月１９日（月）PM6:30～９:00
場所：アイセル２１　３階大音楽室
●第３回ゴミゼロフェスタ
☆時間　１１月１１日（日）午前１０時～午後３時
☆場所　新沼上清掃工場（静岡市）
●〈第４８回定例会〉（毎月第２土曜日）
日時２００１年１０月１３日(土)午前１０時～12時
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　環境ジャーナリストの津川敬さんから「ガス化溶融炉と広域化計画Ｑ＆Ａ（仮題）」（緑風出版）の原稿の一部が10月５日に届きました。Ｑ１～１９は質問のみ。全文をお読みになりたい方は出版までお待ちください。でも核心部分のＱ２０、Ｑ２１のほぼ全文わざわざ送信していただきました。かなり難解な文章（津川さんごめんなさい！）ではありますが、重要な論点が書かれています。是非参考にしてください。

　「一般廃棄物処理広域化行政の混乱」「業界の再編成」「一般廃棄物と産業廃棄物の区分の崩壊」「日本の基準値行政の問題点」「市民側のやり方」等ズバリ切り込んでいます。企業・行政悪人論はあまり言いたくない私としては、やや反論はありますが、問題点の整理としては「さすが津川さん！」と大絶賛です。

●＜私の意見・感想＞●
　私は「廃棄物処理を自治体固有の事務」となっているところに日本の廃棄物行政の根本的な問題があると思っています。すべての廃棄物は生産者・汚染者・排出者の責任・費用負担（生産者・消費者負担）において処理することが望ましいと考えているからです。その意味で「廃棄物処理を市町村の仕事と固定化」することには反対です。津川さんもそのことはご存知な上で、「家庭ゴミと産業廃棄物の区分をなくすことが生産者責任による廃棄物処理」となるのではなく、「産廃を税金処理」に回る危険性を指摘していることは理解できます。しかし、本来ならここでは廃棄物行政としての政策で対案を出す方向に行くべきなのだろうと思いました。

　たまたま今年５月に行われた溶融炉問題ネットの結成集会で津川さんと出席された関東ネットの藤原さんのアドバイスで、静岡県でも環境総合研究所の青山さんの松葉ダイオキシン調査が始まろうとしています。この津川さんの情報が生きた情報として各地でも活用されることを強く希望します。

以下私による的外れかもしれない要約版と津川さんから送られてきたメールです。

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┏━↓ ●ガス化溶融炉と広域化計画Ｑ＆Ａ＜超要約版＞● ↓━━━━━━┓

ｂｙ壷阪道也

●Ｑ２０●循環型社会という目標を掲げながら、国のやっていることはまったく逆です。産業界の意向を受け、環境ビジネスの支援に走っているとしか思えません。
●Ｑ２１●どこの自治体もタイムリミットを楯に住民との話し合いを拒絶しているようです。この状況を突破するにはどうしたらいいでしょうか。

●Ｑ２０●最近のメーカーおよび廃棄物処理行政の動向はどうなっていますか循環型社会という目標を掲げながら、国のやっていることはまったく逆です。産業界の意向を受け、環境ビジネスの支援に走っているとしか思えません。
　　　　
◆崩れ始めた広域化計画
１．2002年12月のダイオキシン規制に間に合せる分も含めて2003年３月には全国で22から26ほどの新施設が動き出している。
２．厚生省「ごみ処理の広域化」通達の「100ｔ未満に国庫補助金支出せず」方針に全国からブーイング。「平成13年度廃棄物処理施設整備計画書提出について」通達で「ごみ焼却施設の処理能力が一日１００ｔ未満の施設についても広域化計画に位置づけられ、ダイオキシン対策が十分と認められれば国庫補助はつける」に変更。
事実、奈良県の明日香村（高市郡）の一日６ｔ炉の単独施設計画が認められた。

◆過当競争と淘汰のはじまり
広域化計画の目標年次は２００７年に向け激しいシェア獲得競争。
特徴はストーカ炉メーカーが巻返し
三菱重工業(トップ企業)は１０００度以上の高温を出す「アドバンス・ストーカ炉」の開発に成功。２００１年６月、住友金属からシャフト炉（酸素吹き込み式）の技術提供を受ける契約。
談合五社（三菱重工業のほか日立造船、ＮＫＫ、タクマ、川崎重工業）はいずれも「次世代型ストーカ炉」の開発で競っている。
日立造船はスーパーストーカ炉を開発し、燃焼管理を十分に行なった上、灰溶融炉はつけない方針。「灰溶融なんて手間とコストがかかる方法はとるべきでない。ある大都市はつい最近、飛灰と主灰を含めた焼却残渣をセメント原料にするという方針。」

◆廃棄物処理業界と行政の再編
環境省は2002年度の廃棄物・リサイクル関連予算の概算要求対前年度比1.5％増の1772億円ですが、その大部分（96％）は廃棄物処理施設整備費(ダイオキシン規制にあわせた国庫補助金がその中身)
◎一般廃棄物（家庭ゴミ）・産業廃棄物の区分見直し
◎拡大生産者責任の強化を求める
という「中央環境審議会の廃棄物・リサイクル部会」の動き。
①自治体の清掃工場が産廃を受け入れ、産廃施設に市町村のごみを入れる
②一廃と産廃の住み分けと許可区分がなくなり、そこに大手資本が乗り込んでくる可能性。
税金をフンダンに注ぎ込んでつくった自治体の大型焼却（溶融）施設に産廃を受け入れるという最悪の事態もある？

●Ｑ２１●広域化計画、ガス化溶融炉導入という大きな流れにどう対抗すべきでしょうかどこの自治体もタイムリミットを楯に住民との話し合いを拒絶しているようです。この状況を突破するにはどうしたらいいでしょうか。

◆反民主主義的な広域化計画に反対すること
その矛盾を明らかにして「無理な広域化計画を見直せ」の話し合いを各自治体ともつこと。そのポイントを以下。
①廃棄物処理を自治体固有の事務と再確認させること
②廃棄物に関する情報を公開させること　
③廃掃法を適正に運用させること
④ガス化溶融炉が環境汚染を引き起こさないという行政やメーカーのいい分を徹底批判すること。

◆基準値行政を打破すること
◎国の決めたＴＤＩ（ダイオキシン類の一日摂取許容量）数値を改めさせる
◎現在の体重1kg当り4ピコグラムを1ピコグラムに引き下げる
※アメリカＥＰＡ（環境保護局）では、ＴＤＩを0.01ピコグラム。
ＷＨＯ（世界保健機構）は１ピコグラム（「男子胎児の精子が将来減るギリギリの線」）
※大気中の平均ダイオキシン類濃度　
東京２３区部４ピコｇ/ｍ3、千葉県５ピコｇ/ｍ3、
アメリカの中都市郊外0.3ピコｇ/ｍ3
◎新しく清掃工場をつくるどころか現在ある施設そのものを順次減らしてゆくという発想が求められている。

◆ダイオキシン類測定の詐術とどう闘うか
◎燃焼が安定した時の測定値は低くなって当然。いわんや「二回測って低い数値を採用」に至ってはもはや詐欺。こんなやり方で年に二、三回測定した数値にどんな意味があるのか。
ゴミ弁連会長の梶山正三弁護士（理学博士）が作成したバグフィルターに関する情報開示請求のポイントを参考に。
※現行ダイオキシン類測定上の最大の欠陥は環境計量士がある時間を区切って採取したサンプルを実験室の中で計測する、いわば「時間の断片」記録に過ぎない。ドイツのＡＭＥＳＡという装置がいま注目されている。

◆市民の手でできること
◎ＡＭＥＳＡとは「ダイオキシン類とフランのサンプリング吸着システム」の頭文字で、原理としては一個のカートリッジ内で最長六週間、排ガス中のダイオキシン類とフランの排出状況が準連続で把握できる装置です。
◎㈱環境総合研究所・青山貞一所長が体系化した「松葉による大気汚染濃度測定」。

◆むすび
大型焼却施設建設ブーム
環境汚染の進行と自治体財政の破綻
国家財政そのものがいつ崩壊するかわからぬ事態
もうこれ以上、後の世代に環境破壊と財政破綻のツケを廻すことは許されない。

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┏━↓● 「ガス化溶融炉と広域化計画Ｑ＆Ａ（仮題）」 ●↓ ━━━━━━━━┓

　津川　敬

●Ｑ１●市の職員や議員が「溶融炉」を入れればダイオキシンも処分場も心配なくなるといっていますが本当ですか。誰もが初めて聞く話なので戸惑っています。
●Ｑ２●ごみの焼却は工場見学会などで説明を受け、理解できましたが、ごみの溶融といわれても見当がつきません。焼却と溶融の違いはどこにあるのですか。
●Ｑ３●新日鉄は溶鉱炉技術でごみを溶かすそうです。テレビなどで真っ赤に溶けた鉄の流れを見ていつも感動します。これならダイオキシンも大丈夫という気がしますが。
●Ｑ４●ガス化溶融炉がどんな技術かわかりません。市の幹部は「これほど優れた技術がもっと早く開発されていたら」といって悔しがっていましたが。
●Ｑ５●ガス化溶融炉にもいろいろ種類があるそうですが、市の機種選定委員会の論議を聞いても何のことやら分かりません。詳しく説明して下さい。
●Ｑ６●キルン型はドイツからの輸入で、流動床型は日本のオリジナルと聞きましたが、流動床炉は大阪能勢でダイオキシン問題を起こしています。大丈夫ですか。
●Ｑ７●市の焼却炉は不完全燃焼つづきで、危ない感じですが、溶融炉の方はビデオで見る限りダイオキシンが高温で消滅するから安全という印象ですが。
●Ｑ８●市長は「バグフィルターをつけるからダイオキシン対策は万全」といいます。各地でバグフィルターの取り付け工事をやっていますが、本当に万全なのですか。
●Ｑ９●住民側が測ったダイオキシン数値と行政側の数値ではまるで違います。住民側の数値が数倍、数十倍多いのですが、どちらを信用したらいいのですか。
●Ｑ１０●ダイオキシンも心配ですが、高温だから発生する有害物質も多いと聞きました。市の担当者は「国の基準に従っている。疑ったらきりがない」ととり合いません。
●Ｑ１１●焼却灰は厄介者ですが、溶融炉から出るスラグは路盤材などに活用されるとメーカーはいいます。でも現実は引取先がなく、山積みになっているようですが。
●Ｑ１２●どのメーカーも安全性・信頼性は万全といいます。たしかにこれまでの欠陥焼却炉にさんざ悩まされてきましたから、地元は納得しているようですが。
●Ｑ１３●あの「技術王国」ドイツでまさか、という気もしますし、マスコミにもほとんど報道されていません。一部の人が意図的に流している情報でしょうか。　
●Ｑ１４●ドイツではそのような事故が明るみに出るのに、なぜ日本では「無事故ＰＲ」ばかりなのですか。技術のレベルは同じ筈なのに不思議です。　　　　
●Ｑ１５●分別という習慣を通じて「自分のごみは自分で始末する」という原則が身についています。なぜ広域処理とやらでよその町へ持ち出すのか、理解できません。
●Ｑ１６●本当に環境が守れるなら大型施設にいくら金がかかっても仕方ありません。しかし必ずしもそうではないようです。行政はその辺をどう考えているのですか。
●Ｑ１７●いま自治体は数億、数十億という財政支出に耐えられる状況なのでしょうか。市の幹部は「国が面倒みてくれるから心配ない」といっています。本当ですか。
●Ｑ１８●「自区内処理」が原則なのに、ダイオキシン対策を名目に住民の知らないところで広域化計画が次々と進められ、全国で多くの混乱が起きていると聞いていますが。
●Ｑ１９●いま進んでいる建設計画は地域住民の意思や感情をあまりにも無視しています。訴訟が起きても当然という気がしますが、現在どれくらい起きていますか。
●Ｑ２０●循環型社会という目標を掲げながら、国のやっていることはまったく逆です。産業界の意向を受け、環境ビジネスの支援に走っているとしか思えません。
●Ｑ２１●どこの自治体もタイムリミットを楯に住民との話し合いを拒絶しているようです。この状況を突破するにはどうしたらいいでしょうか。

●Ｑ２０●最近のメーカーおよび廃棄物処理行政の動向はどうなっていますか循環型社会という目標を掲げながら、国のやっていることはまったく逆です。産業界の意向を受け、環境ビジネスの支援に走っているとしか思えません。
　　　　
◆崩れ始めた広域化計画
別表は環境関連の専門誌等で入手した最新資料ですが、これ以外に水面下で進行している案件もかなりあると思います。表中の完成年次も多分に流動的ですが、二〇〇二年一二月のダイオキシン規制に間に合せる分も含めて二〇〇三年三月には全国で二二から二六ほどの新施設が動き出している筈です。
　繰り返すようですが、厚生省が発した「ごみ処理の広域化」通達はダイオキシン対策に名を借りた環境ビジネスの育成が狙いでしたから、多くの矛盾と混乱が全国にもたらされました。特に「一ＯＯトン未満に国庫補助金支出せず」の方針には全国からブーイングが起こり、厚生省もこれを撤回せざるを得なくなったのです。
　しかし「腐っても中央省庁」ですから厚生省側が謝ったわけではありません。すなわち「平成一三年度廃棄物処理施設整備計画書提出について」という通達の中で次のような表現を使い実質的に方針転換を図っています。
「ただしごみ焼却施設の処理能力が一日一〇〇トン未満の施設については広域化計画に位置づけられ、かつダイオキシン対策が十分に講じられる施設（一〇〇トン以上の施設と同等の基準に適合するもの）を設置するための整備事業であること」。
実に回りくどく官僚的な記述ですが、要するに広域化計画に位置づけられ、ダイオキシン対策が十分と認められれば国庫補助はつけてやる、というのです。
奈良県の明日香村（高市郡）は橿原市、桜井市および宇陀郡内の三町三村を対象とする「奈良県中和東部ブロック」に組み込まれていました。このうち橿原、桜井両市と明日香村は建替え時期を迎え、単独施設をつくる準備をしていました。完成すれば平成三〇年ごろには他の町村が持つ五ヶ所の施設にも更新時期がくるため、それを要件に単独施設計画が認められたのです。しかも明日香村の場合、厚生省が最もきらっていた筈の固定バッチ炉で、しかも一日当たりの処理量はわずか六トンです。
それにしても平成三〇年といえば今回の通達から一七年後であり、その頃の日本のごみ事情が現在と変わらないわけがありません。国と県がそういう判断をしたということは広域化計画がすでに崩れかけている証拠でもあるのです。
明日香村から六トン炉を受注した近畿工業（大阪市）の業務管理部長は次のようにいっていました。
「厚生省がダイオキシンの犯人がバッチ炉だ、みたいないい方をするから我々中小メーカーは悪者扱いだった。ダイオキシン低減技術についてはビッグビジネスに負けない自信があります。厚生省は今回一〇〇トン未満条項を引っ込めたが、県の方で自己規制して市町村側に広域化・大型化を強要しているところが多いんです。市町村の方は『県が広域化しろというなら用地の面倒も県でみてくれ』と怒っています」。

◆過当競争と淘汰のはじまり
一方、大手メーカーの事情ですが、受注合戦はひとまず沈静化しています。二〇〇二年一二月のダイオキシン恒久対策に間に合わせた受注は二〇〇〇年度はじめがピークだったからです。しかし広域化計画の目標年次は二〇〇七年になっていますから水面下でのシェア獲得競争は一層激しくなっています。
さらにもうひとつの特徴はストーカ炉メーカーが巻返しに出ていることです。たとえばこの分野でのトップ企業である三菱重工業は「アドバンス・ストーカ炉」の開発に成功したといいます。これは従来、ストーカ炉では無理とされていた一〇〇〇度以上の高温を出すことができたというものです。ちなみに三菱重工業は二〇〇一年六月、住友金属からシャフト炉（酸素吹き込み式）の技術提供を受ける契約をしています。つまり自社のガス化溶融炉にいまひとつ自信がもてないため、「住金の技術力と重工の営業力のドッキング」を図ったものといえましょう。
　三菱重工業に限らずストーカ炉で稼ぎ捲ってきた、いわゆる談合五社（三菱重工業のほか日立造船、ＮＫＫ、タクマ、川崎重工業）はいずれも「次世代型ストーカ炉」の開発で競っています。日立造船はスーパーストーカ炉なる製品を開発し、燃焼管理を十分に行なった上、灰溶融炉はつけない方針です。同社の掛田健二・環境プラント事業本部部長は「灰溶融なんて手間とコストがかかる方法はとるべきでない。ある大都市はつい最近、飛灰と主灰を含めた焼却残渣をセメント原料にするという方針を打出し、各メーカーにそれをやれるかどうかを打診中だ」といっていました。
　こうして「談合五社のストーカ回帰組」と「ガス化溶融炉で勝負を賭けたい二番手メーカー」のバトルを含め、業界の生き残り競争はますます熾烈化する勢いです。
　ある有名シンクタンクの研究員が次のようにいって苦笑していました。「何しろこの分野（ガス化溶融炉市場）に二〇以上のメーカーがひしめいている先進国は一つもない。よくよく横並びの好きな国です」。
　そうした業界側の〝弱み〟を見透かした形で、自治体側の要求もエスカレートしています。たとえばダイオキシン排出濃度をコンマ以下数桁にしてくれとか、水砕スラグは必ずメーカーが引き取ってくれなど、本来自治体側が行なうべき対策をメーカー側に転嫁するケースが目立っています。総量規制を含め、ダイオキシンの削減は本来自治体の最重点課題であり、見てくれの数値だけ下がればいいというものではありません。メーカー側も受注が欲しいために無理な条件を呑むことになります。「その分自治体が金を出すか、といえばそんなことはない」とあるメーカーの営業マンがボヤいていましたが、いずれ本体の建設後に別の形でモトをとる筈です。

◆廃棄物処理業界と行政の再編
　再び国の政策に戻りますが、このほど（二〇〇一年九月現在）環境省は二〇〇二年度の廃棄物・リサイクル関連予算の概算要求を行ないました。対前年度比一・五％増の一七七二億円ですが、その大部分（九六％）は廃棄物処理施設整備費で、いよいよ本番を迎えたダイオキシン規制にあわせた国庫補助金がその中身です。このほか清掃工場解体撤去工事への支援補助金が四億六〇〇〇万円計上されています。
　もう一つ見逃せないのが一廃・産廃の区分見直しと拡大生産者責任の強化を求める中央環境審議会の廃棄物・リサイクル部会の動きです。本稿を書いている二〇〇一年九月現在ではその素案は公表されてはいないのですが、ある環境関係の業界紙記者によると、おそらく論議の経緯から以下のような事態が予想されるといいます。①自治体の清掃工場が産廃を受け入れ、産廃施設に市町村のごみを入れる、いわゆる相互乗り入れを図る。採算の合わない自治体はＰＦＩなど民間に処理を全面委託せざるを得ない。②一廃と産廃の住み分けと許可区分がなくなり、そこに大手資本が乗り込んでくる可能性も出てくる。
　つまり一廃と産廃の区分を撤廃するということは廃棄物処理業界のダイナミックな再編を意味するのです。もともと一九七〇年の廃棄物処理法を厚生省が所管した目的は、それまで勝手に営業していた処理業者を自省の管理下に置くことでした。業者は一廃、産廃ともガッチリしたライセンス制度下に組み込まれ、規制を受けることになったのですが、その代わりその制度が既得権益にもなったのです。
　たとえば一〇年ほど前、アメリカのウエィスト・マネジメント社が日本の処理業界に参入しようとした時も、この「廃棄物区分にもとづくライセンス制度」が防壁となって同社は日本上陸を断念したといわれています。
　しかし〝区分の撤廃〟はそのまま〝制度の崩壊〟につながりますからそこにアメリカも含む大資本の参入が可能となります。ある産廃処理業者も「静脈産業が旨味のある分野ということで、動脈側の巨大資本が乗り込んでくる」として警戒感をあらわにしています。
　このように見てみると「ごみ処理は市町村の固有事務」などと牧歌的なことはいっていられなくなり、廃棄物行政のあり方そのものも再編を免れないようです。
　だが、もうひとつの課題である拡大生産者責任を行政が厳しく産業界に迫れるかどうかの問題が残ります。これまで責任逃れに終始してきた産業界がスンナリ受け入れるとは到底思えません。
　結局税金をフンダンに注ぎ込んでつくった自治体の大型焼却（溶融）施設に産廃を受け入れるという最悪の事態だけが残ることは目に見えています。
　そうならないために、きたるべき廃掃法の再改正を阻止する広い市民運動の構築がいま問われているのです。

◆反民主主義的な広域化計画に反対すること
　まず広域化計画を市町村レベルから突き崩してゆくことです。Ｑ２０でみたように、計画は全国一律に進んではいません。むしろうまくいっていない例が多いのです。ただ自治体は都道府県の圧力と国庫補助金によって広域化を強いられているのが実情ですから、その矛盾を明らかにして「無理な広域化計画を見直せ」の話し合いを各自治体ともつことです。取り敢えずそのポイントを以下のように絞っておきます。

①廃棄物処理を自治体固有の事務と再確認させること
　ごみの種類と出方は地域によって大きく異なり、その管理と処理方法は地域の実態を知る市町村にまかせるべきです。廃掃法はこの考えをもとに自治体の固有事務としてきたのですから一片の通達等でこれを奪うことは許されません。
②廃棄物に関する情報を公開させること　
　廃棄物やごみ処理施設をめぐる黒い噂が絶えないのは、行政がそれに関連する情報を隠しているからです。情報公開法の意義を生かし、一廃、産廃を問わず行政が持っている情報をすべて公開させることです。
③廃掃法を適正に運用させること
　旧厚生省の広域化計画は法律の適正運用からはるかにかけ離れたものであることはすでに見たとおりです。廃棄物処理法を初めとする関係法規も殆どがザル法にすぎないのですが、取り敢えず現行法にすら違反している今回の広域化計画を白紙に戻させるべきです。
　地域の実情を知らない都道府県の手で広域化の青写真はつくられたものの（実際はコンサルタントに委託）、多くの市町村は、その実施に全く自信を持てないでいます。いまこそ地方分権の精神を確実なものとすべき時なのです。
　さらに二〇二〇年には六五歳以上の人口が一四歳以下の人口を上回るという官庁推計もあるのですから、大型焼却施設は無用の長物か、地域の持て余しものになってしまうのです。
　次にガス化溶融炉が環境汚染を引き起こさないという行政やメーカーのいい分を徹底批判することです。

◆基準値行政を打破すること
　行政やメーカーの拠り所は国の決めた基準値です。その数値さえクリアしていれば安全という論理で、裁判になった場合、司法もそれを判断の根拠にするため、住民側敗訴となる事例が多いのです。ここを突破しないかぎり、道は開けません。
　まず、国の決めたＴＤＩ（ダイオキシン類の一日摂取許容量）数値を改めさせることです。体内に入ったダイオキシン類の半減期は七・五年といわれていますが、これまでに蓄積された量を合わせて考えれば、一日でも早く現在の体重一キログラム当り四ピコグラムを一ピコグラムに引き下げさせる必要があります。
　すでにアメリカＥＰＡ（環境保護局）ではダイオキシン類の発癌性を確認し、ＴＤＩを〇・〇一ピコグラムとしました。ＷＨＯ（世界保健機構）は一ピコグラムですが、これは一ピコグラム以上摂取したら「男子胎児の精子が将来減るギリギリの線」だといわれています。女子胎児の場合は子宮内膜症を発症させる疑いのある数値が四ピコグラムだそうです。
　いま日本は世界最大のダイオキシン汚染国家といわれ、ダイオキシン類、重金属類ともきわめて高い数値になっています。
　現在東京二三区部の大気中の平均ダイオキシン類濃度は一立方メートル当り四ピコグラム、千葉県が五ピコグラムといわれていますが、アメリカの中都市郊外では〇・三ピコグラムです。またアメリカの調査では一グラムあたり一・二ピコグラムを超える魚は月一回以上食べてはいけないことになっています。日本の場合は環境省が測った数値でさえ平均二・一ピコグラム、沿岸域の魚はコプラナＰＣＢを含め平均六・九六ピコグラムになっています（宮田秀明「よくわかるダイオキシン汚染」合同出版㈱九八年）。
　もうこれ以上絶対にダイオキシン類を環境中に出してはいけないレベルになっているのです。また鉛やカドミウムはすでに危険レベルまで日本人の体内に蓄積され、特にカドミウムは半減期三○年というすさまじい蓄積量になっています。
　具体的には新しく清掃工場をつくるどころか現在ある施設そのものを順次減らしてゆくという発想が求められているのです。少なくとも周辺大気汚染濃度が環境基準（一立方メートル当り六ピコグラム以下）を超える場合、建設は許可できない筈です。
にも関わらず日本の環境行政は薬害エイズ、狂牛病への対応に見られるように、産業界寄りの立場をとり続けてきました。ここを打破しなければ状況は一歩も進みません。それを実現させる手始めは、まず「基準値をクリアした」という根拠そのものを追及するところから始めねばなりません。

◆ダイオキシン類測定の詐術とどう闘うか
　Ｑ９で見たように日本のダイオキシン測定は技術のみならず、その姿勢に問題があります。サンプリング・スパイクの欠落、定量下限値の切り捨て、精度管理への無関心、クロスチェックの不備など、まさに「測定後進国」の感がありますが、旧環境庁のダイオキシン類測定マニュアルに重大なごまかしがあったと言わざるを得ません。
　たとえば、①排ガスの採取に当たっては燃焼状態が安定した時点から一時間以上経過した後、原則四時間以上採取すること、②同一試料について二回分析を行い、ダイオキシン類の量のうち小さい方を測定結果とすること、③それぞれの異性体の測定量は定量下限値未満である場合にあっては当該異性体の測定量はゼロとして換算する、
などとなっています。
これでは炉の立ち上げ、立ち下げ時にどれぐらいダイオキシン類が発生しているかは一切わかりませんし、燃焼が安定した時の測定値は低くなって当然です。いわんや「二回測って低い数値を採用」に至ってはもはや詐欺としかいいようがありません。しかもこのマニュアルはそっくりダイオキシン類対策特別措置法施行規則に採用されているのです。
　こんなやり方で年に二、三回測定した数値にどんな意味があるというのでしょうか。仮に測定値がコンマ以下三桁ぐらいになったというなら、どんなごみをどれぐらいの分量燃やし、試運転中にどんなトラブルがあり、どのような対策をとったか、などの情報を公開させると同時に、バグフィルターの設置・運転の状況（排ガスの流速、排ガス量など）さらには消石灰・活性炭噴霧装置の状況、触媒劣化の状況などのデータ提出を求めることです。特にバグフィルターについてはＱ８で詳述したように、トラブルの多い装置ですから念入りに点検する必要があります。
　以下はゴミ弁連会長の梶山正三弁護士（理学博士）が作成したバグフィルターに関する情報開示請求のポイントです。
☆排ガス速度、湿度と炉布面積（排ガス流速によっては濾布が破れる）
☆排ガス中に含まれるダイオキシン類の物理的形状（粒子状かガス状かなど）
☆燃焼室からバグフィルター入り口までの温度低減に要する時間（再合成との関わり）　　☆バグフィルター入り口付近の排ガス温度（同じ）
☆バグフィルターの設置方法（支柱などの歪みで濾布が破損する等）
①バグフィルター入り口の構造はどうなっている
②排ガス冷却装置の構造とバグフィルターの接続関係はどうか
③誘引送風機の仕様とバグフィルターの接続関係はどうか
④消石灰および活性炭噴霧装置の構造とバグフィルターとの接続関係
☆バグフィルター通過後の排ガス温度と、煙突から排出されるまでの温度変化（これはバグフィルター通過後のデノボ合成の度合いに影響を及ぼす）
☆溶融の安定性、排ガス速度および排ガス温度の変動状況（燃焼が安定しなければバグフィルターによるＤＸＮ類除去率も安定しない）
　「東京都渋谷清掃工場建設操業差止請求事件・準備書面より」

　現行ダイオキシン類測定上の最大の欠陥は環境計量士がある時間を区切って採取したサンプルを実験室の中で計測する、いわば「時間の断片」記録に過ぎないことで、連続測定の技術がまだ発展途上であることです。そんな中で今年（二○○一年）のダイオキシン国際会議の会場で紹介されたドイツのＡＭＥＳＡという装置がいま注目されています。

◆市民の手でできること
　ＡＭＥＳＡとは「ダイオキシン類とフランのサンプリング吸着システム」の頭文字で、原理としては一個のカートリッジ内で最長六週間、排ガス中のダイオキシン類とフランの排出状況が準連続で把握できる装置です。ＡＭＥＳＡは一○○○万円程度で取付け・交換が可能といわれ、少なくとも四週間平均して○・一ナノグラム以下を常時クリアしているかどうかの維持管理記録の役割を果たす、ということです。
　少なくとも自治体が主張する数値が長期に渉って変わらないかどうかを見るという点において「時間の断片」記録より優れていることはいうまでもありません。法的根拠があるなしに関わらず、自治体にこれを取付けさせることで状況は動くことでしょう。「国の基準」だけを唯一の判断根拠にしている司法の姿勢を変えさせるキッカケにもなる筈です。
　こうして一種の抽象概念である「国の基準」をビジュアルな世界に引き出し、汚染の実態を突き付けることがいま最も必要な作業となっています。
　その意味で㈱環境総合研究所・青山貞一所長が体系化した「松葉による大気汚染濃度測定」が重要な手がかりを提供してくれます。
　松葉はこれまでも大気中の汚染度、重金属類などの測定分析における環境指標として活用されてきました。原理は、①クロマツの新葉が大気中のダイオキシン類を吸収、蓄積する、②約四ヵ月で濃度変化が少なくなり、定常状態に達する、③いったん蓄積が安定するとその後は大気中の平均濃度につれ、松葉のダイオキシン類濃度が上下することが確認されている、というものです。
　青山氏によれば松葉のダイオキシン類濃度が一グラム中１０ピコグラムなら、大気中のダイオキシン類濃度は１ピコグラムと推計されるそうです。
　そこで四ヵ月以上経過し、蓄積量が安定する六ヵ月以降の針葉を試料に用いればその地域における大気の平均濃度を推定することが可能となるというものです。同時にほぼ同じ地域で環境大気中のダイオキシン類濃度を長期間測定し、両者の相関関係を統計解析して係数化することもできます。
　すでに一九九九年度には全国で三万人もの市民が松葉の採取分析作業に参加し、大きな成果を挙げています。その結果をグラフ化したものが図　です。

◆むすび
　かつて豪華な新庁舎ブームが起き、多くの世論や市民の抗議を無視して建設が各地で進んだように、行政権力はどんな理不尽な計画でも、いったんやると決めたらこれをどこまでも押し通す本能を持っています。今回の大型焼却施設建設ブームがまさにそうですが、その構造を突き崩す内部要因は何でしょうか。それは環境汚染の進行と自治体財政の破綻です。むろん日本の場合、アメリカのように破産管財人が絶対権限を握り、市長が強制解任されるといったドラスチックなものではなく、国が直接自治体を管理・支援する制度になっていますが、それも限界です。国家財政そのものがいつ崩壊するかわからぬ事態になっているからです。
　しかしその日を座して待つわけにはいきません。あと二〇年後、高齢化と小子化でごみが足りず、巨大な焼却施設だけが全国にむなしくそびえ立つ光景を想像してみましょう。
　もうこれ以上、後の世代に環境破壊と財政破綻のツケを廻すことは許されないのです。

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┏━↓● 集会情報●↓━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
●サラワク・プナンの森は訴える
熱帯林破壊と今も闘う先住民族　サラワクから７年振りに緊急来日・来静！
森と森の生活を壊しているのだ誰だ！

時間 2001年10月22日(月)PM6:30～９:00
場所：労政会館５階視聴覚室
参加費：５００円

　伐採と闘っているコミュニティー活動家、油やしプランテーション開発で被害を受
けている村人、地元の環境保護団体の活動家など、先住民族３名がサラワクの現状
を語ります。

主催　サラワク緊急静岡集会実行委員会
　　　JATAN(熱帯林行動ネットワーク)静岡
　　　古紙ネット静岡
　　　政策ネット虹と緑
　　　「ゴミゼロプラン静岡」市民ネットワーク
＜集会の問合せ先＞　
望月敏子254-2813　鳥居千春245-2056　
栗岡理子200-7552　松谷　清209-5676　
壷阪道也257-3177

＜各地のサラワク集会の予定＞
横浜集会１０月１９日(金)
地球の木 045-471-5536
東京集会１０月２０日(土)
ＳＣＣ 090-1500-6635
大阪集会１０月２1日（日）
西岡さん 072-252-0505

●大昭和製紙・日本がコアラの森を壊している？！（仮称）
時間2001年１１月１９日（月）PM6:30～９:00
場所：アイセル２１　３階大音楽室
参加費：５００円

オーストラリアの森林破壊の実態がわかる

●第３回ゴミゼロフェスタ
☆時間　１１月１１日（日）午前１０時～午後３時
☆場所　新沼上清掃工場（静岡市）
　
　　・・・　ごみのことを考えるお祭りです　・・・
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「ゴミゼロプラン静岡」市民ネットワーク（略称ゴミゼロネット）
参加費１００円で誰でも参加できます
〈第４８回定例会〉毎月第２土曜日
日時２００１年１０月１３日(土)午前１０時～12時
　所　アイセル２１　４階４１集会室
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内容
①生ごみたい肥化
②ゴミゼロフェスタ
③古着リサイクル・容リ法　その他
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＜独り言＞
いっぱいやることをかかえていた時、

突然舞い込んできたマレーシア・サラワク州の先住民の来静。

２２日名古屋の集会がキャンセルになって、SCCから静岡にふられたことがキッカケ。

でもとても集会ができる状況ではないのでと断ろうと友人が迷っていた。

7年振りの来日。「やるしかないじゃん！」と集会開催決定。

電話で集会の案内をしていくうちに意外とサラワクの話しを知らないことがわかってきた。

環境問題への関心の広がっていると言われているのにである。

でも、いざ集会をやろうとしても、汗を流して準備する人が少ない。

もちろん、私の人間関係が狭いこともあるかもしれない。

関心の広がりとは裏腹に市民運動は人材不足で死に絶えているにようにも見えた。

プナンの森の民は、商品経済に惑わされず、

静かに狩猟生活をする森の生活を守ろうと立ち上がって戦っている。

私たちはその森を破壊して得た合板を使い捨て、その廃棄方法で困っている。

何たる皮肉！このツケは必ず回ってくる。

プナンの森の民の叫びは、

次世代の私たち自身の叫びを代弁してくれていると思う。

プナンの生の声を聞けるこんなすばらしいチャンスを生かしたい。

（T）
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●●ゴミゼロプラン静岡」市民ネットワーク●●
　☆連絡先☆
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