「津川敬」情報「出雲続報・市町村合併・失業」030507

ゴミゼロ通信の壷阪です。

最近、発信できないままでいます。

大井川のエコセメントの動き、吉津ダイオキシン汚染をめぐる静岡市の動き、静岡市のごみ量が反動で増え始めてしまったこと、未整理ながら近々に発信予定です。

そこへ津川さんから続けて、3通メールが届きました。

情報は早い方がと思い、以下紹介します

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│壷阪道也　　　　　　　　　　　　　　　　　
│〒421-0111静岡市丸子新田277-4
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│Email mirai2@bj.mbn.or.jp future2@nyc.odn.ne.jp
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＜目次＞

●出雲ガス化溶融炉続報　（5月7日発）

●市町村合併とごみ処理施設　　　　（5月5日発）

●ゴミが減ったら失業が増える！（5月４日）

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出雲の事故はHPで以下確認しました（壷）

山陰中央新報

http://www.sanin-chuo.co.jp/

http://www.sanin-chuo.co.jp/news/2003/05/07/07.html

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●出雲ガス化溶融炉続報　（5月7日発）

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　津川です。先にお伝えした出雲のガス化溶融炉トラブルですが、最新の情報が入りました。現地の新聞から記事の一部を紹介します。

《昨年１２月から全面稼動予定だったエネルギーセンターはガス化炉などのトラブルが相次ぎ、試行錯誤が続いている。ごみは同１１月末で閉鎖される予定だった同市神西清掃工場でも暫定的に処理しているが、同工場でも焼却炉のトラブルがあり、修理、点検のため６日までの６日間、通常運転が停止。貯留ごみは増え続けている。同センター貯留施設には同日までに、すでに限度の４４００トンを超える約７０００トンのごみが搬入されている上、ビニール梱包され、屋内外に仮置きされているごみも１１００トンに達し、限度量の１２００トンが迫っている。このため、同組合は梱包ごみの一部をクリーンセンターに移すことにし、１日から同センターのある同市神西地区や湖陵町の住民に説明。了承を得た。　同組合（出雲市外６市町広域事務組合）によると同センターが今月末に本格稼動をはじめても、貯留ごみの処理が終わるのは少なくとも年末までかかる見通し。》（５月７日付け山陰中央日報）。

tsuga@mtj.biglobe.ne.jp
津川敬
０４７－４４６－０２１２

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●市町村合併とごみ処理施設　　　　（5月5日発）

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◆押掛け合併の悲喜劇

　広島市の北西に隣接する人口８０００人弱の佐伯郡湯来（ゆき）町で、６４歳になる女性町長に対抗し、その長女（３９歳）が町長選に立候補した〝事件〟は結局現職の母親が勝ってケリがついた。広島市に合併したいため、現町長が手土産として自分の町に最終処分場（一般廃棄物）を誘致する計画を立てたことが争いの発端である。
　たしかに広島市が処分場をつくりたがっていたのは事実であり、この合併話が実現すればまさに渡りに舟だが、ことはそれほど単純ではない。
　広島市は原爆の後遺症と高度成長期の人口増にインフラが追いつかず、６０年代から７０年代にかけて近隣市町村を片端から吸収合併し、そこに処分場など迷惑施設を押しつけるという政策を進めてきた。「格上げしてやるのだからそれぐらいは」という意識が広島市側にあったことは否めない。しかし地元住民が承服する筈はなく、俄然反対運動が起こった。当時小中学生まで休ませてデモに参加させるなど運動は激化。ことはついに裁判に持ち込まれた。
　一審で住民側は勝訴したが、二審で逆転敗訴。事態はこじれにこじれた。亀裂はあまりにも深く、７０年代半ば、処分場造成計画は行き詰まった。そこで苦肉の策として広島市がとった政策が日本ではじめての五分別方式である。今日でこそ多種分別は当たり前になっているが、その発端はごみパニックであった。
　とりあえず処分場危機は回避されたが、８０年代後半からのバブル期を迎えてごみが再び急増、あわてた広島市は１９９１年、市東北部の安佐北区白木という、これも吸収合併した辺境の地に処分場立地の白羽の矢を立てた。１期を１５年とし、５期７５年間という壮大な計画だった。しかしその周辺は地盤が脆く、しかも広島市全体の水源地でもあった。
　すでに地元有力者に根回しを済ませ、官製の協力組織をつくってアセスの準備に取り掛かったが、市のやり方に怒った地元中小企業の社長が反対運動を起こし、立木トラストや地上権設定で市側と対抗した結果、計画は１０年以上中断したまま今日に至っている。最近になって市側はやむなく現在使用中の処分場（安佐北区）の拡張を地元と交渉し、あと１５年ほど延長使用することで合意を得た。綱渡りだった。
　そんな状況のとき「ごみ処分場」を手土産に隣町に押し掛けられても有難迷惑な話である。地元が「延長はご破産にしよう」といい出しかねないからだ。
　５年前、８４００人を数えた湯来町の人口は、いま８０００人を切った。合併以外生き残りの道はないと思い詰めた女性町長。そのためには地域環境の破壊も辞さないという無謀な処分場誘致計画に町民が異議を唱え、有権者約７０００人のうち、反対署名が２３６６人分集まった。超の字がつく保守的な温泉町では希有の出来事だった。現町長が勝ったのは候補者乱立のためである。まさに国の地方支配の構造が生み出した混乱というべきだが、一方で１１３万都市広島市のご都合主義もまた浮き彫りになっている。

◆広域化計画の破綻

　島根県出雲のガス化溶融炉がギリギリ（本年５月下旬）までトラブった。順当なら昨年１２月１日から正式稼働のはずだったが、直前の１０月になってメーカー側が工期の遅れを広域組合（出雲市外６市町広域事務組合・以下組合）側に伝え、パニックになった。スケジュールに無理が出たことは昨年春、メーカー側は掴んでいたが、それを隠していた。昨年１１月２８日、メーカーと組合の間で覚書きが交わされ、「完成は２００２年２月１日にズレ込むが、圏域から集まっているごみは〝試運転状態〟のまま少しづつ処理すること」で合意が成立した。だがその時点ですでにガス化炉の残渣が次の溶融工程に送られず、炭化状態のままドラム缶に詰められ敷地内に野積みされるという異常事態が起きていた。運転が不安定なら、その数は最高４０００本に達したという。機種はキルン型。ガス化炉と溶融工程が分離している新顔の方式である。
　試運転イコール事実上のごみ処理という変則状況の中で年が明けた。だが事態はさらに悪化していた。「１２月から暫定稼働している出雲エネルギーセンター（施設名称）では運び込まれるゴミの処理が追いつかず、ピット容量の９８％にあたるゴミが積み上げられている。これ以上容量を超えたら組合はゴミをセンター内の敷地に野積みする方針」と本年３月２１日の島根日日新聞が報じている。
　トラブルの原因は「ガス化炉を密閉するシールに歪みが生じ、本来入らない空気が炉内に漏れ込んだ」ためである（同紙）。空気量が多ければ爆発の危険もあった。
　結局２月１日完成の約束は守られず、メーカー側は本年５月末までの納期延期を申し入れた。緊急措置としてすでに廃炉が決定していた出雲市のＪ清掃工場（７５トン・センターから１０キロの場所）にバグフィルター工事を施し、同市ほか３町のごみを処理することになった。費用はむろんメーカー持ちである。もともとガス化溶融炉の公式能力は２１８トン（１０９トン×２）だったが、１日の処理量９０トンがやっとだった。　そして４月末、滞留量４４１６トンが限度だというごみピットに６４６０トンのごみが溜り、さらにベーリング（梱包）した生ごみが９３０トン施設の敷地内に積み上げれていることが判明した。
　そこにもうひとつの機器トラブルが発生した。同メーカー自慢の乾燥機内の軸にひも状のごみが引っ掛かり、動かなくなったのである。結局建屋の屋根を壊し、２台の乾燥機を交換する作業が５月半ばまでつづいた。
　メーカー側は、①残留ごみについては責任を持つ、②５月末には性能試験を終えて組合に引き渡す。③５年間の保障期間後も設計上の不具合で異常が生じた場合、責任を持って対応するなどの文書を組合側に手交した。
　メーカー側は待ったなしの状況に追い込まれた。明日にでも煙突が倒れかねないというＪ清掃工場周辺の住民が５月末の完全閉鎖を要求しているからである。半年しか使用しないその清掃工場に、メーカーは数億円を注ぎ込んだ。ガス化炉、乾燥機の修理費を合わせたら損害は計り知れず、この施設に限り永久赤字は免れない。こうした混乱をもたらした真の原因は何であったのか。
　もともと組合は傘下の２市５町（旧１市３町と平田市、佐田町、斐川町）でＲＤＦ施設をつくる予定だった。しかし９９年に県が示したごみ処理広域化計画では出雲市とその南部３郡（仁多郡、飯石郡、簸川郡）を合わせた２市１４町１村という途方もない規模になっていた。そこで組合の代表理事（西尾理弘・出雲市長）は処理方式をＲＤＦからガス化溶融炉に変更、県から有利な補助要件を引き出すため「本圏域外でも同様の問題（施設の老朽化など）を抱えている飯石郡（４町１村）と広域ブロック外の大田市外２町分のごみを引き受ける」（「組合事業概要」より）こととしたのである。
　だがその２地域はセンター建設地とかなり離れているため、そこから発生する可燃ごみ（生ごみ主体）は中継基地で厳重ベーリング（梱包）してセンターまで運び込むという方針をとった。その梱包ごみが敷地内に積み上がっているのである。長期に渡ると腐敗の心配も出かねない。
「出雲市長は平成１７年の大合併を睨んで盟主的位置を確保しながら、県にも貸しをつくる算段だった」とある出雲市議がいう。真偽のほどは不明だが、ごみ処理広域化計画という上からの押しつけがなければ事態はここまで混乱しなかったはずである。
　しかも「ダイオキシンの心配がなく、国庫補助も有利、多くのメーカーが競争しているからランニングコストも安くなる」とガス化溶融炉に対する無邪気な信頼が混乱に拍車をかけた。不確実な技術が背負うにはあまりにも無謀な計画というべきだった。
　一方、実証プラントの成果が現場では何の役にも立たなかったメーカー側のダメージも大きい。すべては「２００２年１２月１日」に間に合せるための突貫工事だった。経営側の至上命令はコスト合理化であり、その皺寄せはすべて現場が引っ被った。予想を超えるごみ量が１ヵ所に集中する構造もリスクを増大させた。
　ごみ処理広域化計画が生んだこの種の悲劇は全国どこにでも転がっている。

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●ゴミが減ったら失業が増える！（5月４日）

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　津川です。「ごみ減量が進むとＧＤＰ（国内総生産）が鈍る」というユニークなレポートが公表されました。
　岐阜県に本拠をもつ大垣共立銀行系の共立総合研究所による「ごみ減量の経済的意味ーーー名古屋市の先進的取り組みを事例として」です。
　それによるとまず名古屋市のごみ減量化政策が功を奏している、と評価し、今日までの実績を数字に示したあとで次のような仮説を立てています。

「特筆すべきは（名古屋市民が）ごみか資源かに関係なく家庭からの排出物を減らすように消費行動そのものを変化させたと考えることができる」。
　その上でレポートは以下のようにつづけます。
「この点（消費行動の変化）を家計調査のデータで検証したところ、名古屋市ではごみ減量の取り組み前後で消費支出全体に格別変化はないが、被服履物支出（衣類の購入）が大幅に減少したことが明らかになった（グラフで示す）」。
　このことから大胆にも、以下のような推論を行なっています。
「マクロ的視点からごみと経済の関係をみると、わが国のごみ排出量と国内総生産（実質ＧＤＰ）には強い相関があり、ごみ排出量が１％増えると実質ＧＤＰは１.７％増加するという関係が見られる（これもグラフで示す）。もし名古屋市のようなごみ減量の取り組みが全国に広がり、ごみ排出量が減少した場合にはＧＤＰも減少すると考えられる」。
　さらにその推論から次の結論を導き出しています。
「産業関連表を使って、ごみ減量が雇用に与える影響を試算したところ、全国のごみ総排出量が１％減ると、就業者が１１９万人減少し、失業率は１.８％上昇するという結果が得られた。ごみ減量が経済に与える影響は大きい」。

　かつて「ごみ処分場がつくれないと経済活動が衰退する」というメッセージを産業界がさかんに流していました。しかし「循環型社会形成」の掛け声や「環境を武器に企業再生」が主流になったいま、その主張はさすが影をひそめました。　そんな時、「ごみを減らしたら経済活動が縮む」という大胆な見解を披瀝したローカルシンクタンクの意図はどこにあったのでしょうか。
　あるいはこれは都市再生ブームでバブルの再来を狙う首都圏の狂騒と逆に、地盤沈下の止まらない中部経済圏があげた悲鳴のひとつとみるべきかも知れません。
　いずれにせよ「ごみを減らしたら失業率が増える」という見解は、〝税金を使って巨大な施設をつくること〟だけを唯一の廃棄物政策としてきた日本にしか通用しない珍説であることは間違いありません。
　なおこのレポートの全文は、同研究所機関誌「レポート・２００３　ＶＯＬ９２」に掲載されています。

　　　　　　　　　津川　敬
　　　　　　　　　tsuga@mtj.biglobe.ne.jp
　　　　　　　　　047-446-0212